子どもの骨を丈夫にするために

子どもの骨を丈夫にするために
日本骨粗鬆症学会 子どもの骨折予防委員会

はじめに

 近年、子どもの骨折が増加したといわれている。実際、各都道府県における調査でも子どもの骨折率は過去10年間に1.5倍程度増加している。
 これまで、骨粗鬆症の予防法は閉経後の女性の骨密度の減少を、いかにくいとめるかということに重点がおかれてきたが、減少しはじめた骨をくいとめることが いかに困難であるかということもわかってきた。そこで注目されるのは、骨の成長期にできるかぎり骨を増加させ、将来たとえ骨が減少したとしても骨粗鬆症にならないようにしておこうという予防法である。つまり、骨が減少する年齢に骨を増やすことが難しいのに比べ、骨が増える時期により増やすことのほうが比較的容易だからである。

 最近の研究によれば、腰椎の骨は女性では初潮の前後で急激に増加し、16歳ごろに最大となる。男性では2年遅れて増加する。その後女性では、45歳ごろまで一定の値であり、閉経前後から急激に減少する。男性では70歳ごろまで一定の値である。この成績から、男女とも9歳~15歳の時期が骨を増やす最適な時期と考えられた。
 しかしながら現実には、前述したように、この時期に骨折する子どもは増えており、それら骨折する子どもの骨密度は低下している。したがって、現代の子どもが骨づくりに重大な時期に骨密度が低下し骨折する原因を明らかにし、対策を立てることが急がれる。このことは増加しつつある子どもの骨折を予防する観点からも重要であるが、激増する骨粗鬆症患者の骨折を予防する意味でも、はるかに重要な医療対策上の意義がある。

 2001年に日本骨粗鬆症学会は、子どもの骨を丈夫にするとともに、子どもの骨折を予防するための目的で「子どもの骨折予防委員会」を設置した。本委員会で過去5年間にわたり、子どもの骨の現状を分析するとともに、骨を丈夫にするための対策に関して検討を重ねた結果、今回、「子どもの骨を丈夫にするために」の提言を公表するに至った。

Ⅰ. 子どもの骨折の疫学

 子どもの骨折は、長期にわたって動けない状態となるばかりか、子どもの健全な骨発育を障害して骨の量を減らす恐れがあり、将来、骨粗鬆症になりやすくなる危険性があります。したがって、子どもの骨折を予防することは、学校現場において重要な課題の一つです。

図1

II. 子どもの骨を丈夫にする運動

1. 青少年期は急激に骨密度を獲得する骨発育期であり、この時期の骨は成人期に比べ運動刺激によく反応します。とくに思春期前後の運動刺激は効果的です。

2. 同時に身長の伸びる時期は相対的な骨脆弱期であり、骨折のハイリスク期でもあります。また近年子どもの骨折発生率は、負傷率とともに増加しています。

3. 骨を丈夫にするにはどのような運動がよいのでしょう。また、骨折を予防するためにはどのような注意が必要でしょうか。

●小学生の時期から生涯にわたって活動的な生活をすることが大切です。
●同じ運動を繰り返すよりも、さまざまな種目で運動をしましょう。神経系の発達期である小学校期に、さまざまな動きで身のこなしや防御動作を身につけることが骨折予防に役立ちます。
●歩くことはもちろん、荷重のかかる運動を定期的に行うことが骨を丈夫にするには効果的です。
●大筋群を動かす全身運動や、とくに思春期以降は、筋力をつける運動が骨を丈夫にするには効果的です。

4. 運動のやりすぎに注意しましょう。
 -成長期に同じ運動を長時間続けないこと。とくに女性において影響が大きいです。

III. 子どもの骨を丈夫にする栄養

カルシウム
 乳幼児期を除く小児期において700mg以上のカルシウム摂取が健康な成長のためには必要であり、骨折の予防のためにはさらに500~1000mgの増加が望まれます。思春期の成長ばく進の時期においては骨に蓄積されるカルシウム量は600mg/日以上と計算されるので、この時期には1000mgを超えるカルシウム摂取が必要です。

ビタミンD
 健康な子どもの成長のためには1日5μg(200I.U.)のビタミンDの確保が望まれます。

*本提言は、日本骨粗鬆症学会 子どもの骨折予防委員様のご理解とご支援のもと、抜粋して掲載したものです。

JP21NORD00120