軟骨無形成症では低身長のみならず、O脚変形、足関節での内反変形によるぐらつき、上肢の短いことや肘関節が伸びきらないことが問題になる場合があります。これらに対して、整形外科医による外科的治療が行われる場合があります。
短い骨を長くしたり、曲がっている骨をまっすぐにしたりすることができるようになったのは、1960年代にロシアのイリザロフという整形外科医が骨延長手術を確立させたことに始まります。
骨が折れたとき、ギプスや創外固定器などで適切な固定をしていると、仮骨という新しくて軟らかい骨が形成され、それが成熟して骨折は治癒します。
仮骨が成熟する前に少しずつ骨折部を引き離していくと、それによりできたギャップにさらに新しい仮骨が形成され、ギャップを埋めていこうとします。この引き離し操作をゆっくり繰り返すことで、新しい仮骨をつくりながら骨が長くなっていきます。
創外固定器を使用して実際に骨を延長していくときには、その速度について注意が必要です。速く延長を行いすぎると、できていくギャップに仮骨形成が追いつかないため長い骨は上手くつくられません。逆に延長速度が遅すぎると仮骨が早く成熟してギャップがくっついてしまい、予定した延長量を獲得できなくなってしまいます。
また、骨延長では骨だけでなく周りにある筋肉や神経、血管、皮膚なども同時に延ばされていきます。骨と違い、これらの組織の延長には限界があります。関節が硬くなって変形してきたり、麻痺などの神経症状が生じたりするので、骨を延ばす速度や量については十分な監視が必要です。
骨延長ではイリザロフ法で使用されるリング型の創外固定器(図1)以外に、単支柱型の創外固定器を使用することがあります(図2)。
前者は主に下腿骨の延長や、変形のある骨の矯正を行うときに使用されます*。 後者は大腿骨の延長に使用されることが多いです。最近では、より煩わしさの少ない単支柱型の創外固定器の改良で複雑な変形を矯正しつつ骨延長を行ったり、インターネットを通じて骨延長・変形矯正のプログラムを得ることにより、リング型の創外固定器で従来より容易に、かつ正確に延長操作を行うことができるようになりました。
*Ilizarov GA.: Clinical application of the tension-stress effect for limb lengthening. Clin Orthop Relat Res 250: 8-26, 1990
低身長の治療としての大腿骨延長、下腿骨延長では、骨を長くする、すなわち身長を高くすると同時にO脚や足関節の変形を矯正することが多いです。脚が長くなり身長が高くなると、相対的に上肢の短いことが問題になってくる場合もあります。上腕骨を延長することでお尻まで手が届かなかったのが届くようになり、まっすぐ伸びなかったひじが伸ばせるようになります。
手術はほとんどの場合、全身麻酔で行います。硬膜外麻酔という方法を併用すると、全身麻酔から覚めても手術部の痛みが少なく、次の日から車椅子に乗って移動することも可能です。
手術では、延長する骨に皮膚の上からワイヤーやピンを何本も打ち込んで創外固定器の装着を行ってから、延長部位で骨切りをします。この手術終了時には骨の長さには変化はありません。術後5~7日目から骨を延ばす操作を開始します。
各種創外固定器には骨を延ばすための延長器があり、多くの場合は患者自身で延長操作を行います。手術時の年齢、部位などによって違いますが、大体1日あたり0.5~1.0mmを2~4回に分けて延ばしていきます。定期的にX線検査を行い、仮骨の出来に応じて延長の速度を調整することが重要です。延長操作そのもので痛みを感じることはほとんどありません。術後早期には動いたときにワイヤー、ピン刺入部での疼痛がありますが、だんだん慣れてきて痛みは減少または消失します。
下肢の骨延長の場合、早く仮骨を成熟させるために術後早期よりリハビリを行い、しっかり体重をかけて歩く練習を行います。杖を使用する必要がありますが、術後2~3か月ほどで退院し、学校に通えるようにもなります。
元の骨の長さにもよりますが、1回の治療で5~10cmほど延長を行います。1日1mmで延長していくと10cm延長するのに3か月ほどで終了しますが、延長した仮骨が十分成熟してから創外固定器を外すため、総治療期間は大体延長期間より長くなります。
延長量が大きくなってくると筋肉も引き延ばされてくるため、延長している骨の近くの関節が硬くなってきて痛みを伴うようになります。延長終了時期はこの痛みの程度や関節の硬さによって決まる場合がほとんどです。
骨延長手術のタイミングについては特に決まった時期があるわけではありません。治療期間が大変長く、途中で治療を止めて創外固定器を外すこともできないため、家族の理解が十分にあり、かつ患者さんご自身が治療に対して意志を持つようになる頃が良いタイミングです。すなわち、患者さんも治療に関し同意を示せる年齢に達していることが望ましいと考えられます。
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