軟骨異栄養症における背骨(脊柱)の症状は主に3つあります。
まず、脊柱管狭窄症(図1)による症状です。軟骨異栄養症では、背骨のなかにある空洞で脊髄および脊髄神経が通っている脊柱管が先天性に狭く、これに加齢による変化や後述する脊柱の変形が合併すると、脊柱管狭窄症という状態になります。歩いたり立ったりしていると足がしびれたり、足の力がなくなってきたりします。尿失禁・便失禁もあります。
2つめは、頭蓋骨のすぐ下にある第一頸椎(環椎)と第二頸椎(軸椎)に不安定性が生じる「環軸椎不安定症」による症状です。手足がしびれたり、手足の動きが悪くなったりします。重篤な場合には呼吸が止まって命に関わることもあります。
3つめは、脊柱の曲がり(脊柱変形;側弯、後弯など)(図2)による症状です。本疾患の場合、胸椎と腰椎の間が曲がって後ろに飛び出してくる「後弯症」が多く、痛みの原因になります。後弯症は脊柱管狭窄症を助長します。
いずれも根本治療として手術が必要です。脊柱管狭窄症は症状が出現するまでは治療の必要はありませんが、環軸椎不安定症や後弯症は、痛みや神経症状が出現してからでは、手術をしても症状が良くならない可能性もあるため、予防的な手術も検討されます。
ただ、軟骨異栄養症は四肢が短いため、脊柱の曲がりを矯正しすぎると尻に手が届かなくなり、排便後の処置に支障を生じることがあります。成長ホルモン投与で背骨の曲がりが増悪することもあります。
したがって、脊柱の曲がりを治療する際には、小児科医、四肢担当の整形外科医、脊柱担当の整形外科医が十分にコミュニケーションを取る必要があります。
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