軟骨異栄養症の治療


② 軟骨無形成症と軟骨低形成症の違い

軟骨無形成症と軟骨低形成症の違い


軟骨低形成症は軟骨無形成症の軽症型と考えられることが多いのですが、一般的には、軟骨低形成症も軟骨無形成症に含まれます。また、両者を総称して軟骨異栄養症ともいいます。
 軟骨無形成症と同様、近位四肢短縮型の低身長を呈します。しかし、頭部、顔貌は正常で、ひじ関節の伸展制限および前腕の回外制限が存在しますが、三尖手は認めません。9%程度に軽度の精神発達遅滞が認められます。
 発症頻度は軟骨無形成症の約1/8で、本症の遺伝様式も軟骨無形成症と同様、常染色体優性遺伝です。
 出生時は四肢の短縮は明らかでなく、乳幼児以降に徐々に目立ちはじめますが、比較的軽度であるために乳児期での診断は困難です。幼児期に低身長を主訴に受診し、診断される場合が多くあります。
 原因は軟骨無形成症と同じくFGFR3遺伝子の異常です。しかし、軟骨低形成症の遺伝子変異は軟骨無形成症とは異なり、FGFR3のチロシンキナーゼ1 という部分の突然変異で、約半数の例でN540Kの変異を認めます。しかし、このほかにもいくつかの変異があり、また、FGFR3遺伝子以外の遺伝子の異 常によっても、軟骨低形成症が起こることがあるといわれています。明らかに軟骨低形成症の症状があっても遺伝子変異が見つからない症例もあり、この場合は 遺伝子変異を認めるものと比べ症状は軽度であるとされています。したがって現在のところ、遺伝子診断が絶対的な診断法とはいえません。
 X線では軟骨無形成症と同様に、腰椎の椎弓根間距離が正常とは逆に上部から下部にかけてやや狭くなる所見があることが多いですが、はっきりしないことも あります。骨盤も軟骨無形成症と同様に骨盤の上部の発達がよくないため、四角形型を示すのが特徴的とされていますが、程度は軽いことが多く、読影が困難な ことがよくあります。四肢骨は太くて短いのが特徴で、足の腓骨が脛骨より長いことも特徴とされています。
 軟骨低形成症は身体症状、X線、遺伝子検査などを総合して診断されますが、症状は比較的軽いものからはっきりしているものまでさまざまなタイプがあり、必ずしも均一な疾患とはいえないのが現状です。
 現在のところ根本的な治療法はありませんが、軟骨低形成症に対しても成長ホルモン(GH)治療の保険適応が認められています。遺伝子診断で確実に軟骨低 形成症と診断された人と軟骨無形成症と診断された人の成長ホルモン治療に対する反応性ははっきりと異なっていて、軟骨低形成症の方が身長増加は良好です (図1)。成長ホルモン治療は、特に軟骨低形成症では欠くことのできない治療と考えられるようになりました。また、治療後数年間の観察では手足のバランス の改善傾向も示しています。軟骨低形成症の方が治療効果が大きい理由は今のところ分かっていません。 
 

1)Shiang R, Thompson LM, Zhu YZ, et al.: Mutations in the transmembrane domain of FGFR3 cause the most common genetic form of dwarfism, achondroplasia. Cell 78: 335-342, 1994

2)Bellus GA, McIntosh I, Smith EA, et al.: A recurrent mutation in the tyrosine kinase domain of fibroblast growth factor receptor 3 causes hypochondroplasia. Nat Genet 10: 357-359, 1995

3)清野佳紀, 長谷川奉延, 安田敏行, 他: 座談会 軟骨異栄養症の臨床と研究の進歩. 小児科診療 69: 890-895, 2006

柏木 博子 / 大阪厚生年金病院小児科 医長
清野 佳紀 / 独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院(旧大阪厚生年金病院)名誉院長/岡山大学 名誉教授
(本文 : 清野 佳紀監修 : 改訂版骨の病気と付き合うには,メディカルレビュー社 : 61-63,2010
図 : 清野佳紀, 他 : 座談会 軟骨異栄養症の臨床と研究の進歩, 小児科診療 69 : 890-895, 2006より引用改変)

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