骨形成不全症とは


骨形成不全症の原因について

骨形成不全症の原因はコラーゲンの異常によることが多いと述べましたが、なぜコラーゲンの異常によって骨折が起こりやすくなるのでしょうか。このこ とを知るためには、骨のしくみについて知る必要があります。骨は体を支える支持組織として非常に重要な働きがありますが、この骨は絶えず同じ状態にあるの ではなく、骨の吸収と形成を繰り返しているのです。小児期では骨の形成が吸収を上回り、骨は長く、また、太くなっていきます。成人期では骨の形成と吸収が ほぼ同じになるため、骨の状態は一定となります。老年期では吸収が形成を上回るため、骨は細くなり、短くなることもあるのです。
 骨の形成は、骨基質と呼ばれる部位にカルシウムの沈着(石灰化)が起こることによります。この骨基質は、例えるなら木の幹にあたるもので、骨の構造を支 えている部分と思っていただければ良いと思います。この骨基質を構成している中心的な存在が、コラーゲンなのです。骨基質を構成しているコラーゲンはⅠ型 コラーゲンと呼ばれています。このⅠ型コラーゲンの異常で骨形成不全症は起こるのです。コラーゲン以外にも骨の形成あるいは維持に必要な物質があります。 石灰化の過程で重要な働きを持つ物質としてオステオカルシンやオステオポンチンなどがあります。また、コラーゲンが石灰化したあとにコラーゲン分子間をつ ないで、構造の維持に働くものとして、ピリジノリンやデオキシピリジノリンなどの架橋物質が必要です。これらの物質は、骨の形成や吸収の指標にもなりま す。
 骨形成不全症の原因であるコラーゲンについて解説したいと思います。Ⅰ型コラーゲンは、3本の線維からできています。2本のα1線維と1本のα2線維が 3重らせん構造をとり、強固なコラーゲンとなります(図1)。コラーゲンは互いに規則正しく配列することにより(図2)、より強固で弾力性に富んだ骨の幹 となるのです。ですから、コラーゲンの異常によりしっかりした幹ができない場合は(図3)、骨の強度が低下して骨折しやすくなると考えられています。
 コラーゲンの異常が起こるのは、コラーゲンを産生する遺伝子に異常があるためであり*、今までに200以上の遺伝子異常が報告さ れています。コラーゲンを産生する遺伝子は、α1線維は17番染色体上に、α2線維は7番染色体上にあります。遺伝子異常の部位によってコラーゲン線維の 一部が障害される場合と、コラーゲン線維全体が障害される場合とがありますが(図4)、全体が障害される場合の方が重症であると考えられています。
 Ⅰ型コラーゲンは主にグリシン-X-Y(X、Yは別のアミノ酸)の3つのアミノ酸の繰り返しで構成されています。グリシンはコラーゲンの3重らせん構造 の中心部にあり、構造の維持に重要な役割を果たしていると考えられています。したがって、遺伝子異常によりグリシンが別のアミノ酸に変わった場合、らせん 構造の維持ができないためコラーゲンの強度は弱まり、重症度が高くなるとされています。
 また、コラーゲンの線維の種類によっても重症度は異なるとされており、α2線維に異常がある場合の方がα1線維に異常がある場合よりも重症であるとされています。
 Ⅰ型コラーゲンの質的な異常が骨形成不全症の原因になることは今まで述べてきましたが、Ⅰ型コラーゲンの量的な異常、つまりコラーゲンの合成量が低下し たり、合成されたコラーゲンが細胞外に分泌されないことも骨形成不全症の原因になります(図5)。この異常もコラーゲン遺伝子の異常によって起こります。 このタイプは比較的軽症の骨形成不全症になることが多いとされています。
 コラーゲンの異常が骨形成不全症の原因となることが多いのですが、コラーゲン遺伝子に異常が見つからない骨形成不全症患者も存在します。また、コラーゲン遺伝子の同じ部分に異常が見つかっても、その重症度が異なることがあり**、コラーゲン異常以外の要素も骨形成不全症の原因や重症度に影響を与えると考えられています。
 コラーゲン遺伝子に異常を認めない型の骨形成不全症のなかで、コラーゲン分子のらせん構造形成に関与している物質(CRTAP:cartilage- associated protein)の異常で病気を発症することが判明しました。新たに分類されたⅦ型の骨形成不全症の原因はこの物質の異常であるとされています。
 


* Chu ML, Williams CJ, Pepe G, et al.: Internal deletion in a collagen gene in a perinatal lethal form of osteogenesis imperfecta. Nature 304: 78-80, 1983

** Starman BJ, Eyre D, Charbonneau H, et al.: Osteogenesis imperfecta. The position of substitution for glycine by cysteine in the triple helical domain of the pro α1 (I) chains of type I collagen determines the clinical phenotype. J Clin Invest 84: 1206-1214, 1989

 

平井 治彦 / 摂南総合病院小児科
大薗 恵一 / 大阪大学大学院医学系研究科小児科学 教授
(清野 佳紀監修 : 改訂版骨の病気と付き合うには,メディカルレビュー社 : 158-162,2010)

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