骨形成不全の治療


外科的治療

(3)背骨(脊柱)


 1. 病因と自然経過

骨形成不全症の背骨の病態で最も問題となるのは、背骨(脊柱)の曲がり(脊柱変形)です。その病因ははっきり分かっていませんが、骨のもろさ、弱さからく る、さまざまな脊柱の一個一個の骨の変形(魚椎変形、楔状変形)が大きく関わっていることは明らかです。放置すると呼吸器障害を起こし、寿命に影響を及ぼ すと言われています。その具体的な機序として


①曲がった脊柱による肺の直接的な圧迫で肺が開きにくくなること。
②曲がった脊柱で気管支が圧迫、閉塞し、肺が開かなくなること。
③胸郭が変形し、肺が開きにくくなること。
④腰の骨が曲がり、肝臓、腸、胃などの腹部臓器が行き場を失い横隔膜を押し上げ、横隔膜の動きが悪くなるために肺が開きにくくなること。などが分かってい ます(図1)。したがって、たとえ、脊柱(胸椎)が曲がっていなくとも、胸郭の変形や腰が曲がっていれば呼吸器に影響が出ることもあるわけです。 
 

また、実際の症状、たとえば息切れするとか、呼吸が苦しいというような症状は、肺がダメージを受けてかなりの期間(数年~数十年)が経過してからしか出現 せず、それから治療しても十分回復しない恐れがあります。したがって、ある一定以上の曲がりがあれば、症状の有無にかかわらず、治療が必要です。また、脊 柱の曲がりが大きくなると座位の保持が困難になり、車椅子のひじ掛けを持つ、または、ひじをつくという姿勢をとらないと座れないという事態が生じます。こ れでは片手が使えなくなり日常生活に大きな支障が生じます。これも脊柱の曲がりを治療しなければならない大きな理由です。
 

 2. 保存治療

骨形成不全症患者だけでなく、ほかの疾患に合併した脊柱の曲がりも同じですが、保存治療はほとんど無効です。体幹装具(コルセット)は一部疾患では、進行 防止効果はある程度期待できますが、骨形成不全症に関しては、胸郭の変形を助長するため脊柱変形に対する装具治療は禁忌(してはけないこと)ともいわれて います。
 

3. 手術治療

骨形成不全症の脊柱 の曲がりの治療は脊柱に金属を入れて矯正し、金属を入れた部分は骨で固めてしまい、バランスの良い、呼吸器症状や痛みのない安定した脊柱をつくるのが目的 です。骨が弱く、金属を入れても大きな矯正力が加えられないため、できるだけ脊柱や脊髄に無理なく矯正を加えるために何回かに分けて手術する方が望ましい です。非常に大きな手術になりますが、それが恐いからといって逃げていると曲がりがどんどん進み、手術がどんどん難しく、かつ危険になってきますので、時 期を失しないようにすることが大事です。術後半年から1年は体幹装具が必要ですが、これは脊柱の曲がりの保存治療で用いられる胸郭を圧迫するようなもので はなく、体全体を優しく包み込むような装具になります。

宇野耕吉/国立病院機構神戸医療センター整形外科 部長
(清野 佳紀監修 : 改訂版骨の病気と付き合うには,メディカルレビュー社 :213-215,2010)

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