骨形成不全の治療


外科的治療

(1)骨折・四肢変形とその治療


1. 骨折について
 

a. 骨折の起こり方

 骨は硬くて折れにくいと思われていますが、正常の骨組織でも、「ねじれ」に対して非常に弱く簡単に折れます。たとえば、野球のボールを思い切り投げた際、普通の青年でも上腕骨が折れることがあります(投球骨折)。
 骨形成不全症の子どもは、骨の力学的構造が通常よりも弱いので、わずかな「曲げる力」や「ねじる力」が骨に作用すると折れてしまいます。
 更衣時に手足が洋服に引っ掛かったり、子どもを抱いて移動中に下肢が障害物に軽く引っ掛かるだけでも骨折を起こします。ひざの下に手を入れて抱き上げる際に、少し体を抱き直そうとして折れることもあります。日常の育児の場面でも常に細心の注意が必要です。
 運動機能レベルが立位までの子どもでは、一般的に大腿骨や上腕骨など、胴体に近い部位での骨折が数多くみられます。一方、独歩が可能なグループでは、大腿骨、上腕骨に加えて、前腕・手指や下腿・足部の骨折も比較的多くみられます。
 

b. 症状と注意事項

 骨折の症状は多彩です。強い痛みと変形(骨の曲がり)や異常可動性・痛くて身体を動かせない、などの症状がそろえば、X線検査でも明らかな骨折像がみられ、容易に診断ができます。
 しかし、これといった原因も思い当たらないのに徐々に疼痛が出てくる場合や、数日間の安静で疼痛が消えてしまうような場合でも、骨折が生じていることも あります。子どもが疼痛を訴えなくとも手足を動かさなかったり、抱っこやオムツ交換・更衣を嫌がる場合、また、鈍い痛みであっても軽快せずに数日以上続く 場合には、主治医の先生に相談されることを勧めます。
 激しい痛みでなくとも新たな骨折があれば、骨折の治療をしなければなりません。でなければ、動かしているうちに徐々に弯曲変形が生じてくる可能性があります。いったん真っすぐな骨が曲がると、より折れやすくなることを知っておかねばなりません。
 

c. 治療方法

(1)応急処置

 骨折が疑われる場合、子どもを病院に連れていく間も骨折部を動かすと強い痛みが生じ、子どもを苦しめます。
 前腕・下腿以下の骨折の際には、一側の上肢または下肢全体を段ボールやボール紙を用いてロール状に巻いて固定してください。救急隊に連絡すれば、空気シーネ(空気を入れて膨らますと副木の役割を果たす医療器具)で固定して病院まで搬送してくれます。
 上腕骨や大腿骨の場合には、戸板や大きな段ボールを重ねて担架として子どもを寝かせて搬送します。骨折のある上下肢は、できるだけ搬送中に揺れ動かないように軽く固定すると疼痛は軽減します。
 

(2)保存的治療(手術をしないで治す治療法)

 骨折治療の原則は、骨折部の変形を矯正(整復)し、骨折部が動かないように固定することです。その方法には、ギプス治療(石膏で骨折のある上肢または下肢を固める)と手術治療(手術により骨折部を直接に鋼線やねじ釘・金属プレートなどで固定する方法)とがあります。
 ギプス治療は比較的簡便に外来処置室でできる方法ですが、骨の折れ方によっては、全身麻酔下で整復しなければならない場合もあります。また、年少児では、暴れてギプスを巻くことができず、余儀なく全身麻酔下に行うこともあります。
 乳幼児期の子どもでは、腕や脚が小さくて細く、ギプスで正確に骨折部を固定することが困難な場合も少なくありません。一方、下腿骨折の場合は、比較的正 確に固定することができ、治療成績も良好です。年少児であっても、骨折部位と折れ方によっては、手術治療(第Ⅴ章5節②-(2)参照)を行います。
 いずれの方法であれ、骨が癒合するまで固定しなければなりません。年齢・骨の折れ方・骨折部位によって固定する時期は異なりますが、おおよそ3か月くらいは必要です。
 X線検査上、骨折部の骨連続性がみられても骨折線が明らかに残存している早期にギプスを除去すれば、軟らかくて強度的にも弱い新生骨でつながっているだ けなので、骨折近くの関節の動きによってアメ棒のように骨折部から曲がってくることがあります。通常よりも少し長い期間の固定が勧められます。
 

(3)手術治療

 ギプスでは正確な固定が困難な場合や、骨折の治療時に同時に弯曲変形の治療も行う場合などに手術治療が行われます。骨皮質が厚く骨粗鬆化の軽度な場合 (Ⅰ型の成人例など)以外では、手術治療としての創外固定術や金属プレートを用いた固定方法は勧められません。骨皮質の厚さが薄く、骨粗鬆症の程度が強い 多くの子どもには、鋼線を用いた髄内固定法が標準的な治療法といえます。
 

d. リハビリテーション

 一般に、骨に軸圧(骨の長軸方向に加わる圧迫力)が加わると骨形成が促進され、逆に骨に軸圧が加わらなければ骨からカルシウムが抜け出て脆い骨になります。立位・歩行が効果的な軸圧の加え方ですが、筋肉を何回も収縮させることでも骨に軸圧が加わります。
 

(1)乳幼児期

 乳児期前半から、四肢に活発なジタバタ運動をさせ(筋肉の収縮を頻回にさせる)、できるだけ四肢の骨に軸圧が加わるように仕向けます。運動発達に合わせて、床上での移動なども積極的にさせます。
 立位・歩行年齢になっても、筋力的にも骨強度的にも荷重位をとることが困難であれば、症例を吟味の上、骨盤帯付き長下肢装具を用いて起立台上での立位訓練を行うことも考慮します。
 

(2)ギプス・手術治療後のリハビリテーション

 ギプス装着によって痛みが消失すれば、骨折部がしっかりと固定されている限り、患肢を動かし使用するように、また、下肢の場合は、ギプスのまま歩行する ことを勧めます。上肢であれ、下肢であれ、できるだけ早くから骨に軸圧を加えることが骨形成にも有利に働き、また廃用性骨委縮(骨粗鬆症)・筋委縮の予防 と改善に効果的です。
 骨折部に隣接する関節に運動制限がみられれば、関節可動域の拡大練習を行います。この際、骨癒合の程度に合わせて運動強度を調節しなければなりません。
 関節可動域の改善と同時に筋力強化も重要です。四肢の運動においては、強い筋力ほど、骨への直接の負担が軽減するからです。

廣島 和夫 / 国立病院機構大阪医療センター名誉院長
         大阪発達総合療育センター南大阪療育園 園長
(清野 佳紀監修 : 改訂版骨の病気と付き合うには,メディカルレビュー社 :202-205,2010)
 

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