ビタミンDの食事摂取基準


ビタミンDの食事摂取基準


身長が低いとか骨の病気などの話が出ると、食事のことが気になる人が多いのではないでしょうか? 特に、カルシウムとリンという骨の主要構成成分の吸収に重要なビタミンDの食事摂取は重要です。健康な日本人を対象に、1日に必要な栄養素の摂取量の基準 を最新の科学的な根拠に基づいて示したものが「日本人の食事摂取基準」です。厚生労働省が5年に1度改訂を行い、現在は2010年版が栄養に関するさまざ まな場面で用いられています。ここではビタミンDの食事摂取について、この2010年版を基に説明します。表1に摂取基準を示しました。ビタミンDの量は μg/日で書いてあります。ビタミンDは国際単位(IU)で表すこともありますが、5μgが200IUに相当します。
 母乳中のビタミンDの含有量は0.6~3.0μg/Lです。適度な日照を受けている母乳栄養児は健康であると仮定し、乳児の1日の哺乳量の平均値を 0.78Lとすると、0.47~2.34μg/日の摂取で健康が維持できるということになり、この表1の目安量が示す2.5μg/日という数字が算出され ます。ここでの適度な日照とは、顔だけなら週2時間日照を受けること、顔と手足ならば週30分間の日照を受けることをいいます。つまり、乳児にとって、1 日5分間程度の日光浴は必要だということです。日照を受ける機会が少なくてもっぱら母乳で育った乳児では、くる病の危険が高くなります。このような場合に くる病の発生を予防するためには、5μg/日程度のビタミンD摂取は必要となります。小児期では国民栄養調査結果から摂取量の中央値が目安量として提唱さ れています。本来ならば、子どもの血液中のビタミンD濃度を測定し、その値が基準値となった子どものビタミンD摂取量から求めるべき数字ですが、このよう な研究は非常に少なく信頼性が乏しいので、このような結果になってしまっています。 


現在ではビタミンDの働きはカルシウム、リンの調節だけではなく、筋肉の発達や免疫反応にも大変重要だと考えられています。一方、食事摂取基準はもっぱら くる病の発症予防の観点から設定されているものです。さらに、皮膚癌などの皮膚障害を予防するため小児期における日照の制限が行われる現状を考えると、健 康維持のためにはもう少し高い摂取量が必要だと思います。ちなみに、最近の国民栄養調査では乳幼児期を除き、平均のビタミンD摂取量は5μg/日以上と なっています。また、表2にビタミンDをたくさん含む食品をまとめておきました。
 栄養の過剰な摂取は、どの栄養素であっても体にとって害となります。ビタミンDは脂溶性ビタミンと呼ばれるビタミンで、ビタミンBやCなどの水溶性ビタ ミンとは違い、体のなかの脂肪に蓄えることができます。このようなビタミンとしては他にAやK、Eがあります。体に蓄えることができるということは一見便 利なように思えますが、たくさん入りすぎて蓄える能力を上回ってしまった場合には、血液にあふれ出して、過剰症と呼ばれる症状を出してしまうことになりま す。ビタミンDは血液中のカルシウム量をあげる作用がありますので、ビタミンDの過剰症は高カルシウム血症となります。高くなりすぎたカルシウムは腎臓に 沈着したり、血管を縮めたりして、頭痛、吐き気、高血圧、腎機能の低下、おしっこが出なくなるなどの症状を引き起こします。通常の食品には過剰症を引き起 こすほどのビタミンDは含まれていませんので、普通は食事をとることによって過剰症となることはありませんが、健康食品やサプリメント、総合ビタミン剤を 体に良いという理由でたくさんとりすぎると過剰症となる危険があります。食事摂取基準ではこれ以上摂取すると過剰症となる摂取量が耐容上限量として表され ているので、注意しましょう。
 

 

田中 弘之 / 岡山済生会総合病院小児科 診察部長
(清野 佳紀監修 : 改訂版骨の病気と付き合うには,メディカルレビュー社 : 338-341,2010)
 

2525B006802