骨形成不全症は、骨の脆弱(ぜいじゃく)性があり(つまり骨折を起こしやすく)、また骨折が治る過程で骨が変形してしまう病気です。重症度に個人差があることが特徴で、骨折を全く起こさず、この病気であることが分からないまま一生を終える人から、生まれる前に胎内ですでに骨折を認め、出生後早期に亡くなる人までさまざまです。
原因の多くは、骨をつくっている蛋白質であるI型コラーゲンの異常です。おおまかにはその異常の種類によって重症度が異なります。また、骨以外に存在するI型コラーゲンにも異常を来すため、多くの症状があらわれます。
骨形成不全症の正確な頻度は分かりませんが、約2万人に1人とされています。これは人種に関係ないといわれています。
一方、国内の研究によると、医療機関に通院している非致死性骨形成不全症の患者数は1,380人で(2010年1月1日時点)、推定の有病率は10万人あたり8.16人とされています1)。
骨は絶えず同じ状態にあるのではなく、古い骨が分解され、壊される骨吸収と新しい骨がつくられる骨形成を繰り返しています。形成は、骨基質と呼ばれる部位にカルシウムの沈着(石灰化)が起こることによります。例えば、小児期は骨の形成が吸収を上回り、骨は長く、太くなっていきます。成人期は骨の形成と吸収がほぼ同じになり、骨の状態は一定となります。
骨を木にたとえれば骨基質は「幹」にあたり、骨の構造を支えています。この骨基質を構成する中心的な存在がI型コラーゲンです。
Ⅰ型コラーゲンは、2本のα1鎖と1本のα2鎖が 3重らせん構造をとり、強固なコラーゲンとなっています(図1)。I型コラーゲンは互いに規則正しく配列することにより(図2)、より強固で弾力性に富んだ骨の幹となります。I型コラーゲンの異常により、しっかりした幹ができない場合は(図3)、骨の強度が低下して骨折しやすくなると考えられています。
コラーゲンの異常が起こるのは、コラーゲンを産生する遺伝子に異常があるためです2)。
Ⅰ型コラーゲンは主にグリシン-X-Y(X、Yは別のアミノ酸)の3つのアミノ酸の繰り返しで構成されています。グリシンはI型コラーゲンの3重らせん構造の中心部にあり、構造の維持に重要な役割を果たしていると考えられています。したがって、遺伝子異常によりグリシンが別のアミノ酸に変わった場合、らせん構造の維持ができないためI型コラーゲンの構造が異常となり、重症度が高くなるとされています。
こうしたⅠ型コラーゲンの質的異常の他に、量的な異常、つまりI型コラーゲンの合成量の低下なども骨形成不全症の原因になります(図5)。
I型コラーゲンの合成、細胞外へ分泌される過程に関わる蛋白などの異常による、I型コラーゲン遺伝子に異常が見つからない骨形成不全症患者も存在します。
さらには、I型コラーゲン遺伝子の同じ部分に異常が見つかっても、その重症度が異なることがあり3)、コラーゲン異常以外の要素も骨形成不全症の原因や重症度に影響すると考えられます。
1 石井智弘、大関覚.:非致死性骨形成不全症のビスホスホネート治療の保険収載に関する研究―非致死性骨形成不全症の有病率と内科的・外科的治療の実態把握に関する研究―.厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業).非致死性骨形成不全症の診断及び治療方法の更なる推進に関する研究.平成22年度研究分担報告書 14-16,2011
2 Chu ML, Williams CJ, Pepe G, et al.: Internal deletion in a collagen gene in a perinatal lethal form of osteogenesis imperfecta. Nature 304: 78-80, 1983
3 Starman BJ, Eyre D, Charbonneau H, et al.: Osteogenesis imperfecta. The position of substitution for glycine by cysteine in the triple helical domain of the pro α1 (I) chains of type I collagen determines the clinical phenotype. J Clin Invest 84: 1206-1214, 1989
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