骨形成不全の治療

骨折と骨の変形

はじめに

 骨形成不全症の子どもは、骨の力学的構造が通常よりも弱いので、わずかな「曲げる力」や「ねじる力」が骨に作用すると折れてしまいます。また、骨折が治る過程で骨が変形してしまう病気ですが、いずれの変形も、その部位を走行する筋肉の影響や、関節運動の方向・重力などの影響を強く受けています。しばしばみられる変形に、以下のものがあります。なお、内反(ないはん)、内旋(ないせん)、回内(かいない)とは、腕や脚の動きを表す言葉です。

①上腕骨:骨幹部中央の弯曲(わんきょく)変形やひじ関節付近の内反内旋変形
②前腕骨:回内内旋変形など
③大腿骨:近位部での屈曲外転外旋変形・骨幹部中央での内反内旋変形・遠位部での内反内旋変形など
④下腿骨:前弯変形など
⑤脊柱:側弯変形

図1 図2

四肢の変形

 上記のうち、四肢(腕と脚)に変形が生じる原因は次のようなことがあります。

・骨折が十分に整復されないまま骨折部が癒合した
・不十分な骨癒合の状態で荷重や筋収縮によって変形が生じた
・直接に骨折が関与することなく荷重・筋力によって徐々に骨組織に変形が生じた(塑性変形)

 四肢の変形があると、筋の収縮力や重力が「曲げ応力」として骨に作用し、より骨折しやすい状況をつくります。これが、骨折時の偽関節(骨の癒合が完全に停止してしまった状態)を来しやすい一因にもなります。さらに、関節付近に生じた変形は、成長とともに関節面のゆがみを増強させ、関節可動域制限の原因になります。

背柱(脊骨)の変形

 脊柱では、主として重力位姿勢による多数の脊椎骨に生じた微小骨折・塑性変形が側弯変形を形作っていると考えられます。

 側弯度が中等度を超えれば、座位・立位バランスに影響を及ぼし、筋力の弱い場合、座った姿勢でも上肢で支えていなければならず、上肢が使えなくなります。
 また、側弯の角度を表す「Cobb(コブ)角」が60°以上の高度弯曲例では、明らかな呼吸機能の低下がみられます。より高度の弯曲例では、心臓(右心)への負担が増加し、呼吸器感染症などが加わると右心室系の心不全症状も出てきます。弯曲した脊柱が直接に気道と食道を圧迫していた例もあります。このように、高度の脊柱側弯変形は、命にかかわることもあります。

JP21NORD00120